なぜ子どもは時間を守れるのに大人は守れないのか?

朝8時45分のチャイム、1時間目の授業開始。10時35分、休み時間。12時30分、給食。学校に通う子どもたちは、一日中「時間割」という枠組みの中で生活しています。彼らはこの時間割に従って、スムーズに活動を切り替え、効率的に一日を過ごしています。
一方で私たち大人はどうでしょう。「今日も会議が長引いた」「やるべきことが多すぎて手が回らない」「残業が続いて疲れた」——こんな言葉を口にしながら、常に時間に追われる日々を送っていませんか?なぜ子どもは時間を守れるのに、大人はそれが難しいのでしょうか。この違いの背景にある原因と解決策を探ってみましょう。
子どもの時間管理から学ぶべきこと
教育心理学の研究によれば、学校の時間割は子どもたちの認知発達を考慮して設計されています。子どもの脳は40〜50分の集中と10〜15分の休憩というリズムで最も効率よく機能するとされ、学校の時間割はこの自然なリズムに合わせているのです。
大人の場合、自分で時間を管理する自由がある反面、このような自然なリズムを無視しがちです。近年の調査によると、働く大人の多くが1日のうち長時間連続で集中作業を行っていると報告されており、これは脳の最適な機能リズムとは合っていません。
子どもから学ぶべき重要な教訓は、「明確な時間区分」と「適切な休息」の組み合わせです。では、大人の日常でこれをどう実践すればよいのでしょうか?
効果的な時間管理ツール多くのビジネスパーソンが時間管理のために様々なツールを使っています。付箋、手帳、デジタルツールなど選択肢は多様ですが、それぞれに長所と短所があります。
私は以前、付箋を活用した時間管理を試みました。しかし付箋は貼ったり剥がしたりを繰り返すうちに粘着力が弱まり、重要なメモが気づかないうちに失われることがあるのです。一度、重要な約束を書いた付箋をなくして失敗した経験から、付箋の使用を見直すようになりました。
付箋(ポストイット)はアメリカの3Mの研究員が偶然開発した製品で、現在では100カ国以上で販売される人気商品です。時間管理の観点からは、付箋は一時的なメモや目印としては優れていますが、継続的なタスク管理には向いていません。実際、多くの人が付箋でスケジュール管理をしている際に重要な予定を見落とした経験を持っています。
デジタル時代のメール管理時間管理のもう一つの重要な側面がメール対応です。一般的な会社員は1日に多数のメールを受信することが珍しくありません。この大量のメールをどう効率的に処理するかは現代のビジネスパーソンにとって重要な課題です。
多くの人がメールを整理するために削除作業に時間を費やしていますが、実はそれ自体が時間の無駄なのです。かつてはサーバー容量の制限から不要メールの削除が必要でしたが、現在のクラウドサービスではその必要性が低くなっています。私自身、メールは基本的に削除せず、代わりに既読メールを非表示にする設定を活用しています。
また、効率的なメール管理のための色分けシステムも取り入れています。「黄色は後で読む、赤は重要、青は時間ができたら熟読」というように色分けすることで、毎朝、未読メールを素早く分類し、緊急度と重要度に応じた対応が可能になります。
時間割を大人の生活に取り入れる
本質的なのは子どもの時間割から学ぶ「区切り」の概念です。スタンフォード大学の研究によると、1日を90分の作業時間と15分の休憩に分ける「ウルトラディアン・サイクル法」を導入した社会人は、生産性が向上し、ストレスが低下したことが報告されています。
イギリスのブリストル大学が行った職場の生産性研究では、短い運動休憩を取り入れている従業員は、集中力が向上し、業務効率が改善することが示されています。
「忙しい、忙しい」と言いながらも効率が上がらないのは、私たち大人が子どもたちの「時間割」から学ぶことを忘れているからかもしれません。この機会に、あなた自身の「大人の時間割」を作ってみてはいかがでしょうか。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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